1963年、ちょうど50年前、小生は、南米ボリビアの沖縄県人移住地のジャングルの中にいた。山の中の暮らしにも、そろそろ慣れた頃、琉球政府古波倉副主席と農林局天野次長が移住地コロニア視察に現れた。視察の本務を終えたお二人に、手渡したのが、一握りのトボロチ(トックリキワタ)の種子。その子孫が今沖縄中の山野を豪快に飾っているが、それとは別に、当時サンタクルス市内外で、これまた豪快に咲いていたジャカランダの花の美しさに感服した天野氏が、即座に命名したのが、和名;紫雲木シウンボクである。「満開時の並木道が、まるで紫の雲が棚引いているようだ」と、表現したのである。そのシウンボクの苗が、養秀の杜・植物苑に、僅かながら用意された。この熱帯花木の持ち味を理解して、着実に植えて、咲かせる自信のある人に提供したい。ジャカランダは、首里の竜潭近くの道端にかれこれ60年以上立っているが、一向に満開とならない。竜潭の水が流れ出る水路の真上に植えてあるため、徒長してしまい、生殖(開花)を忘れてしまったようだ。シウンボクは、成長期には、水と肥料をたっぷり施す必要があるが、一旦成長したら、水も肥料も控えて、いじめた方がいい。金持ちの惣領のジンロクのように育てると(すべての熱帯花木同様)開花は望めない。この理屈を知った上で、挑戦する人にこの貴重種を預けたい。