2007/10/31(水) 09:55 - よろず 組 がじゅ丸 (女)
『U-topia』
いったいこの世の中に、理想郷なんてあるんだろうか。
俺ときたら、ついてないことばかり。不幸な星の元に生れてきたんじゃないかと思うくらいだよ。
まったく、こんなに一生懸命働いても会社は倒産に次ぐ倒産、これで何度目だ?
あ~あ、って落ち込んでてもしょうがない。テキスト作成のパンフレット、なんとか売らなくちゃ。
最後の100円だ、自販機で缶コーヒーでも買って、そこの公園で休憩したらまたがんばろっと。
あれ?今すれちがった人、どっかでみたことあるなーーー。だれだっけ?
あー、ずいぶん昔にどっかの会社いたとき、営業に来てた牛乳屋のおやじだ。
社会人なりたてのオレに、頑張れよってよく牛乳くれたよな、あのおやじ・・・・・・・・・・・・・・・・・。
挨拶したほうがよかったかな?でも牛乳屋のさえないおやじだしな、メリット度なさそう・・・・・・・・・・。
いやいや、牛乳の恩がある。お世話になってるしな、やっぱりこんにちはくらいは。ありゃ、300mくらい行っちゃったよー。
たったったったっ・・・・・・・・・・・・・・。(ゼーゼーゼーゼー・・・)
あの、こんにちは、以前お世話になりました、Uです。覚えてらっしゃいますか?
よく牛乳をいただきました。その節はありがとうございました。
あの、その節のお礼といってはなんですが、これ、今そこの自販機で買ったものです。よかったらどーぞ。
(あ、オレ、なにいってんだ~。きょうの最後のおやつ代で買っためっちゃうまいこのコーヒー。。)
うん?ああ!あの当時Uッシッシ商事の新人だった、Uさん?
あぁ、君頑張ってる?このコーヒー?いいの?僕の好きなコーヒーだ。
(オレもやねん。)ど、どーぞ。では、ボクはこれで・・・。
キミ、今何してるの?営業中?そっか、頑張ってるんだね?
そーか、昔みたいに牛乳は持ってないんだが、そこのカフェでコーヒーでもどう?
時間が取れれば、だけど。缶コーヒーのお返しにごちそうしますよ。
(え?ちょうど、喉乾いてるけど。100円小銭使っちゃったから、明日までの予算1000円しかないし。)
(えーーい!いいや。おやじと2人分のコーヒー代くらい1000円では足りるだろ。)
いえ、コーヒーは僕が。懐かしいですね、ではご一緒しましょう。
(うっ・・・。言うことだけはカッコいいこと、オレ。なけなしの1000円・・・。)
(このカフェ、たまに来るけど、フランチャイズだよな。ここの場所は初めてだ。他よりちょっと高級そう、1000円で足りるかな?)
いらっしゃいませ。○○へようこそ。・・・、あ、社長!
えっ?えっ?今何て言った?この執事風のおっさん。社長?牛乳屋のおやじが社長?
(君がさっき私に差し出した缶コーヒーね、最近我が社が自販機販路に乗り出した目玉商品でね。
自社の活路を見出す戦略商品なんだ、この美味さがわかる人物が、またよく昔の恩と覚えていてくれた。
なにかの引き合わせかもしれない、と咄嗟に思ってしまってね。強引だったかな?)
人生どこに、チャンスが転がっているかわからない。
その時、その場所で、自分に出来得る限りの礼を尽くす。
たとえ100円だって、あのときのオレの出来るすべてだった。
オレは無限に広がる100円玉ひとつでチャンスをつかみ、U-topiaを実現した。