2010/02/11(木) 11:59 - こちら 組 なぐも ゆき (女)
『君、心の中は』
おーい!おーい!
だれかがどこかから叫ぶ声がするな。だれだ?
おいおい、それはつれないじゃないか。
ついさきほどまでそばにいて笑ってたじゃないか。
うん?
面白いことを言うじゃないか。いったい君はだれだい?
ずいぶんな言葉だなぁ。
だからこんなとんがりになってしまうんだよ。
君にあんな仕打ちをされるとは思いもしなかった。
僕はこんなに傷ついた。
はて、君になにをしたというんだい?
第一、私は君を知らないね。
それこそ、君、とんだ言いがかりというもんだよ。
あ~あ、やはり君もそうか。
だから人間てもんは嫌なんだ。
冷たい季節を共に笑いながら過ごしてきた想いというものをどこかに置き去りにしやがって。
なんだか、私にはさっぱりわからないね。
暦がめくれた途端に、僕を打って追いやってしまった。
いったい僕が君に何をしたというんだ。
おいおい、そりゃあ、君の被害妄想だ。
私は暴力なんてふるう人間じゃない。
人間は都合のいいようにシナリオを書き換えるのが得意だな。
僕だってこんなところからとんがってきたくはないさ。
冷たい、白い季節の中で君らは美しいものをたんと得たはずなのに。
春が近づくとみるや、掌を返したように僕につぶてを投げつける。
いったいいつから僕は鬼と呼ばれるようになったというんだ?
体につぶてを受けて息も絶え絶え、こうやって君にひとめ会いに来たというのに。
君は・・・・。
そうさ。僕は去りゆくもの。
だがね、覚えておいてくれたまえ。
鬼が生まれるのは、人の心の中ゆえ。
一番恐ろしいのは人だということをね。
さて、そろそろもう僕はいけないや。
いつかまた会えるときがあるならば、願わくば君の心の中に鬼が生まれていることのなきよう。
鬼はそと!福はうち!
鬼はそと!福はうち!