沖縄県立首里高等学校:49期 掲示板

No.302 ゴシップ的丸谷才一推奨論

2012/12/31(月) 12:24 - 3-8 組 M ()
 えー、いきなりではありますが、今回はこれまでとはちょっと趣向が異なりますよ。
 作家の丸谷才一氏のことを書こうと思っているからです。

 丸谷さんが亡くなってから、今年の1月に出版されたエッセイ集『人魚はア・カペラで歌ふ』(文藝
春秋)をじっくりと読んでいるところですが、もう丸谷さんの新作を読むこともできなくなるのかと思う
と、なんともいえず寂しい限りです。

 ただし、最初に白状しておくと、私は丸谷さんの小説はまだひとつも読んだことがありません。小
説家としての丸谷さんにはたいへんな不義理を犯している人間です。
 そういう人間が名残を惜しむというのもおかしな話ではあるけれども、丸谷さんには小説家として
の顔とは別に、エッセイスト、批評家としての顔があって、私が親しく接していたのはもっぱらこちら
の丸谷さんでした。

 というわけで、私が読んだ丸谷さんのエッセイのなかから名論卓説の数々を紹介しようと思った
のだけれども、いざ取りかかってみるとこれが甚だ具合が悪いんだなあ。なにしろ、どれもこれも面
白いものばかりだから、どれを取り上げようかということだけで困ってしまう。
 ずいぶんと思案したのだけれども、しかたがない。涙を呑んで丸谷さんのエッセイのなかからひ
とつだけ紹介することにします。実に惜しいなあ。

 あ、本題に入る前にちょっとだけ注釈めいた話をすると、丸谷さんは日本語批評をライフワーク
のひとつにしていて、山崎正和さんとの対談をまとめた『日本語の21世紀のために』(文春新書)の
ほか、卓抜な日本語論が何冊もあります。

 そうした日本語批評のひとつに、「ゴシップ的日本語論」(同名の単行本に収録。文藝春秋刊)と
いうエッセイがあるのだけれども、これを読んで私は驚倒させられた。
 タイトルに違わず、日本語にまつわるゴシップがいくつも出てくるエッセイだけれども、そのなかで
中心に据えられているのが、昭和天皇の言語能力に関するゴシップなのだから、驚かないわけに
はいかない。

 まず丸谷さんは、ハーバート・P・ビックスさんの『昭和天皇』(講談社)と鳥居民さんの『昭和二十
年』(草思社)という2冊の本を紹介した上で、この2人の歴史家は別々に、そしてほぼ同時に同じ
ことを発見した、と口火を切る。それは、「昭和天皇が皇太子であつたときに受けた教育に、重大
な欠陥があつた」ということだった。あとは丸谷さんの文章から引きますよ。

   その結果、昭和天皇は、何を語つても言葉が足りないし、使ふ用語は適切を欠き、語尾が
  はつきりしなくて、論旨の方向が不明なことを述べる方になつた。拝謁(はいえつ)した首相や
  参謀総長は、よいと言はれたのか悪いと言はれたのか、どういふ思し召しだつたのか、まつた
  く分からない。そのため御前を下がつてから内大臣とか侍従武官長と協議して検討した。協議、
  検討といふと立派でありますが、はつきり言えば、揣摩憶測(しまおくそく)して群盲象を撫でる
  がごとくにいい加減な結論を出したわけであります。

 しかもその弊害は昭和天皇自身にも跳ね返っていく。

   昭和天皇は、この孤立した生き方のせいで…そしてコミュニケイションの不足によりいよい
  よひどくなる言語能力の低さのせいで、情報が手にはいらなかつた。

 かくして、昭和天皇には情報が入らず、首相や軍首脳には天皇の真意が伝わらないという負の
サイクルが出来上がってしまった。これが昭和の日本の歯車を大きく狂わせることになる。

   天皇であり大元帥である方は、社交といふ局面以上にもつと痛切な面で、切実な面で、言
  語を用ゐることが求められてゐた。本来なら統帥権と政務との関係において、どうしても発言
  しなければならない場合があつたはずです。なぜさうなるかといふと、明治憲法の不備によつ
  て、明文化していない曖昧(あいまい)にしてある事柄のせいで、どうしても天皇の親裁を必要
  とする事態が生じるのです。
   ここのところがわたしは問題だつたと思ふ。つまり昭和天皇個人を責めることはできない。
  明治憲法がもつと言語的にしつかりしてゐれば、昭和天皇の言語的能力の不足も、かなり補
  ふことができたのではないか。つまり、一国の言語がシステマティックにをかしかつた。だから
  それが憲法にも出たし、天皇の教育にも出た。さういふ関係になるわけですね。

   昭和史は、昭和天皇の言語能力といふところから攻めてゆけば、かなりよくわかつてくる。
  そのことをどうしてしないのか。単に政治経済だけを論じることが日本の国運を論じることだと
  思つてゐる。それでは駄目なんですよ。そんな態度だから日本の政治はあれだけひどいこと
  になつたし、経済はいまこんなひどいことになつてゐる。わたしは、さう思ふ。一国の基本のと
  ころにあるものは言語の問題なんです。

 どうです、すごいでしょう。
 昭和天皇の口ベタというゴシップから、明治以降の日本の近代国家システムの欠陥という問題
に展開していく見事な文明批評。目から鱗が落ちるとはこのことじゃないかしら。

 私は昭和史については人よりも詳しいつもりでいましたが、こんな形で昭和天皇を論じ、戦前日
本の没落の原因を解明する視点があるとは思ってもみませんでした。びっくりしたけれども、あ、そ
うだったのかと膝を打つ思いがした。
 昭和史論は数々あれど、含蓄あるこの丸谷史観(ここはどうしても史観という言葉でいきたい)の
前では、どれもこれも色褪せてしまうような気がする。たとえばほら、日中戦争も日米戦争もコミン
テルンの謀略で始まったという説が一時しきりにもてはやされたものだけど、あれなんか、丸谷史
観の前に据えると気の毒になるくらいに格が落ちるよ。

 えー、話を本題にもどしますね。
 昭和天皇のゴシップから始まる丸谷さんのエッセイはますます冴え渡り、小林秀雄と明治憲法の
文体の共通性を論じ、マニュアル文章に意味不明な悪文が多いのはなぜなのかを分析しながら、
とどのつまりは、文明論的日本語批評が次々と繰り出されてきます。

 そのなかでも私がとても気に入っているのは、NECがノンフィクション作家の海老沢泰久さん(ご
本人はパソコンのことは全然知らない人だった)にパソコンのマニュアルを書いてもらったら、毎日
新聞社のマニュアル大賞(そんなものがあるのですね)を受賞する程の傑作が出来上がった、とい
うエピソード。

 丸谷さんによると、普通、新しいパソコンを販売してからしばらくの間は、「パソコンの使い方が分
からない」「マニュアルを読んでもやっぱり分からない」という人たちからの問い合わせの電話がひ
っきりなしにかかってくるのだそうです。その対応に10人ぐらいの社員が一日中、かかりっぱなしに
なるというから大変だ。

 でも、海老沢版マニュアルを添付したパソコンの時は、そういう問い合わせをしてきたのは、たっ
たひとりだけだったらしい。
 パソコンに触ったこともない人物が優れたマニュアルを書き上げた、いや、そういう人物だったか
らこそ書けたという逆説が、私のような機械オンチには実に面白かったけれど、それだけじゃなくて、
文明の道具としての言葉の重要性がよく分かるゴシップ。

 この話には後日談もあって、せっかくNECはパソコン・マニュアルの名作を手にしたのに、それ
を台無しにしてしまった。パソコンってあれこれ新機能が付いたりしますけど、そういう手直しをした
時に、海老沢さんのマニュアルにNECの社員がいじって間に合わせたんだそうです。
 そうしたら、たちまち意味が通じなくなったんだって。もったいないことをしたものだなあ。
 丸谷さんは慨嘆します。

   文章なんてものは大したことぢやないんだ、いざとなれば口で説明すればいいんだ、といふ
  発想が根強くあるわけです。文章で伝達しようといふ心がまへが根本的にない。遠い所にゐ
  る人への伝達を原則にしてゐない。つまり村落的人間の生き方なんですね。

   マニュアルも商品のなかの一部分であると考へれば、マニュアルが駄目な機械は一種の欠
  陥商品だと、ぼくは思ふんですね。すくなくとも、ぼくのやうに文章を読んでものごとを理解する、
  都市型の消費者の立場から言ふと、どうもをかしい。

   かういふ所が、われわれの文明の弱点だなあと思ふんです。

 そして丸谷さんは、政治の世界における言葉の貧困さにも苦言を呈します。

   たとへば日本の政治家の表現能力の乏しさ。まづ無内容であるし、何を言つてるのかよくわ
  からないし、まして技巧がないし、心に届かない。民主政治つてものは、金力によつてでもなく
  血統によつてでもなく、言葉によつておこなふ政治だといふやうなことがよく言われます。これ
  は民主政治の原則でありますが、もしさうだとすれば、日本ではその言葉による政治つてもの
  がまつたくおこなわれてゐない。

 うーん、これは、安倍さんあたりによくよく拳拳服膺(けんけんふくよう)してもらいたい文章だなあ。

 えー、なんだか話が政治向きにばかりなってしまったけれども、それはもっぱら引用者である私の
せいで、丸谷さんのせいではありません。

 せっかく丸谷エッセイの面白さを景気よく宣伝するつもりだったのに、読者諸兄に、丸谷というの
はなにか小難しいことばかり書いていた奴らしいや、と思わせてしまったかもしれない。
 でもね、丸谷さんのエッセイはどれもこれも読んで面白いものばかりだし、読み終えた後はいつ
も、自分がいくらか賢くなったような気分に浸れる、という効能付きなので、読んで損することはない
と思いますよ。

 これも丸谷さんのエッセイから教わったような気がするけれど、文学の世界にはパスティーシュ
という手法があります。他人の作風や文体を模倣してひとつの作品を書き上げることです。
 賢明なる読者はもうお気づきでしょうが、あなたが今読んでいるこの文章も、丸谷さんのエッセイ
のパスティーシュ(のつもり)です。それがうまくいっているか、そうでないかは、ぜひとも丸谷さんの
エッセイを読んでみた上で判断していただきたい。この文章の出来はともかく、丸谷さんのエッセイ
がすこぶる面白いことだけは請け合う。

               (丸谷才一氏は10月13日に87歳で亡くなりました)

【追記】
 今年は、周辺がとにかく賑やかな年でありました。49期の北村健・浩子夫妻には長男が誕生し
たし、同じく49期のわが畏友・與那原大樹はめでたくも長女を儲けた。そのほかにも、小・中学校
時代の友人たちで子供が出来たのが5人もいて、ちょっとしたベビー・ブームの年でありました。
 北村、與那原両君夫妻に改めておめでとうございます。来年もよろしくお願いします。
 49期の皆々様もよいお年を。

No.301 那覇副市長に久高将光氏

2012/12/01(土) 09:33 - 最後の一中生 組 吉田朝啓 () chokei@nirai.ne.jp
今朝の新聞を見て、目を見張った。那覇市の副市長に首里高校卒の久高将光氏が就任することになったという記事。玉陵(タマウドゥン)のハブ駆除と林内の整備、公園化というプロジェクトを翁長市長に捧げるプレゼントとして進めていこうと考えていたところだ。市長と副市長に共々努力してもらって、大事業を成就してもらおう。それにしても、一匹のハブが示唆してくれたこの事業。昔から沖縄の人々はハブなど自然の物やその存在の在り様からいろいろなインスピレーションを受けて、日常生活のささやかな指針としてきた習わしがあったが、今年10月、養秀同窓会会館敷地に小さいハブが現れ、捉えられたという事象は、単に一匹の毒蛇の問題ではなく、「グスク並びに歴史遺産群」の一つとしての玉陵と首里城台地に太古の昔から住み着いているハブの在り様の問題を、現代のスインチュに問いかけている課題なんだと、考える。天の時、地の利、人の和は揃ったと、前回の書き込みに述べたが、翁長市長に直接談じ込む前に、久高副市長にまず熟知してもらって、その後市長が英断を下す方式に変えよう。世の中、いよいよ面白くなってきたな。久高将光副市長の就任・激励会をもしやるんだったら、是非参加したいから、同期生会の諸君よろしく。

No.300 相変わらず、ここさびしいなあ

2012/11/26(月) 13:19 - 3-3 組 美鈴 ()
久しぶりにのぞいてみたら、最後の書き込み9月。
49期生って!!

で、楽しいことがあったので報告~♪
去る、11月17日(土)に新都心の『月の魚』ってお店でプチ同窓会しました!
最初は軽い気持ちで飲み会を計画したのでしょうが、友達が友達を呼び当日はクラスになった事ある人もない人も入りまじり、15,6人の集まりになりました。
その時に初めましてって話した人もいたので、いい機会になりました。
家に帰って久しぶりに卒アル開きましたよ!クラス確かめたり(笑)

また集まりましょうってことになったので、その時にはまた人数増殖するのでしょう(^^)

No.299 初めてきました

2012/09/26(水) 03:55 - 染織デザイン科 組 松田美香(旧姓渡慶次) ()
こんな掲示板があるのを今まで知りませんでした。
呑むのに忙しく、出席日数全く足りませんでしたが何とか卒業させていただいたものです。
卒業アルバムの進路欄が空欄なのは私一人でした。
懐かしいです。
どなたか染織デザイン科以外の方でも松城中出身の方ならどなたか私をわかる方いらっしゃいませんか?
もしわかる方いらっしゃいましたらメール下さい。
今は結婚して沖縄市に住んでいます。

No.298 暑いですね。

2012/09/19(水) 16:14 - せんたつ女 ()
みなさんどうも。東京在住のものです。先日、Qさまという番組の収録で、本番前ぼくのところに「あ、あの、しゅしゅ、首里高校で一緒だったんだ、だけどど、お、覚えてる?」と、くせ毛でメガネでくせ毛の男性が。ナンシーでした。僕が「当たり前やし!チャーリーだろ?」と冗談で返したら「そ、そだよ」と、もうチャーリーでいいや感のナンシー。「えー、ナンシーだろ、なんでこんなとこいるば?」と聞くと、「い、いま、ひょんな事からQさまのクイズつ、作っててさ」と。おーすごい!ナンシーがQさまのクイズ作ってるなんて。そしてそのクイズ...しに難しさよ!もずく、漢字で書けるかや!皆さん、今度のQさま三時間スペシャル見て下さい。ナンシーの作ったクイズやってみて下さい。

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